あしたの畑 2025:夏期公開

Exhibition

「あしたの畑」は2020年より間人で活動を開始し、5年目を迎えます。

今年は夏期・秋期の2回にわたる公開を予定しており、今年度は初めて、韓国の文化財団「ONJIUM」との連携プロジェクト「SEA BRIDGES」を始動しました。

 

夏期では、昨年より段階的につくりあげてきた「間人レジデンス」のすべての空間が整い、今回全貌を初公開します。
「間人レジデンス」は、現代美術家 AAWAAが、表具師、左官職人、和紙職人、木工職人、そしてTOMORROWと共に、その技と京丹後の風土に向き合った、新たな居住空間です。

 

これまでに制作してきた4つの展示空間をすべて公開。さらに、5つ目の展示空間となる「MIYA Tea House」の制作プロセスも公開。
本作は、ユネスコでの持続可能な建築学教授に任命されている建築家アンナ・ヘリンガーと陶芸作家マーティン・ローチ、TOMORROWの共同制作による半屋外のアートインスタレーションです。間人の土を使い、地元住民や学生たちとあたらしい“食とアートの場”をつくります。

 

今年度は、画家・荻原美里が描く間人の風景の水彩画をメインビジュアルとし、グラフィックデザイナー・祖父江慎により紙面上で展開します。

なお、鑑賞はすべてスタッフによるガイド付きツアー形式でのご案内となります。チケットはこちらよりご購入ください。

 

 

会期

2025年8月9日(土)ー9月15日(月・祝)

土・日・月・祝日のみ公開

11:00-17:00(最終入場 16:00)

会場

間人スタジオ、SEI TAIZA、間人レジデンス、宮のあしたの畑

主催

NPO法人TOMORROW、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁

鑑賞料

1,000円(全会場共通) 1時間ごとのツアー制/要事前申し込み

〈宮のあしたの畑〉の作品は常時自由鑑賞、無料

助成

森村豊明会

委託

令和7年度日本博2.0事業(委託型)

本展覧会はスタッフ(日英対応可)が展示作品の背景や地域の歴史などを説明しながら鑑賞いただくツアー制となっております。

こちらより、ご希望の時間帯をご指定して予約ください。

*事前予約制となっておりますが、当日の飛び入り参加も可能です。

写真:Kim Ilda

平和、安寧に向かい、人はさまざまな思考と行動を試みる。畏敬の念を抱く神/自然ー上(かみ)への価値観の違いから試行の誤解が生じ、生きるため、食べていくための必死な思いから欲が闘争する。

音楽は、美しい食や創造物は時として、心に作用する。未来を生きる人間に何が残せるのだろうか?家族や親しい人に残すことができるのは思い出だ。それでは他者にできることはより良い社会のためによりよく生きる言動であるとすれば、その思いのもとに集まるもの同士に意見の相違は全くないのだろうか?

AIに尋ねればほとんど得られるアンサーは、相手を気遣う心や、よりよいクオリティーを追求する意志、経験による美意識の蓄積までも凌駕するのだろうか?

強い意志のもとに集まる者同士の意見の相違は蝋燭の炎のような微かな揺らぎであると思いたい。そして判断を委ねられる個人が決断するまでの心の揺らぎがぴたと定まる瞬間、生まれるもののクオリティーが定まる。

ひとつひとつの判断を糸に喩え、それを束ねると、あしたの畑における”芸術表現”となり、受け手の心に届けられる。

どうか喜んでもらえるようにと祈りをこめるも、前例のない・見たことのない表現は座礁したり、砕け散ることもしばしばだ。

しかし諦めない心が、行動が、時として人を動かす現実を体験してこれたことも事実である。どうしてよいかわからなくなると禅の修行では、半眼で少し前に視点をあわせ、ゆったりと呼吸する。そうしているうちに心と向き合い、自身が見えてくる体験だ。

揺らぎはちょうど思考の瞑想のように、ひとつに心をあわせていく最終段階かのように感じることがある。そこまでくると、次の世代に大切なこと・ものを委ねるタイミングなのだと思っている。それは集落を受け継いでいくように、長い時間をかけて、培っていく生そのものだ。芸術文化活動もそしてもちろん安寧を希求することも終わりのない旅のように、続いていく。

中川周士による「木の部屋」。太古の暮らしにも木との共存があった。陶磁器のように数多くは残ってはいないが、手からすくうのではなく、石や木のスプーンでものを食べるようになった。その頃、人と空との関係は今よりもっと心の距離が近かったのではないかと思いを巡らす。中川はひとりで空を見上げながら小さな死を迎えるような眠りの空間を考えた。眠るごとに再生し、生きる力を木から得る、そんな願いを感じるこの木の部屋はいずれ屋外での展開を夢見ている。

テレジータ・フェルナンデスによる「独白(間人)」。竹野川河口、後ヶ浜海岸には、高さ20メートルもある巨大な玄武岩の一枚岩「立岩(たていわ)」が聳え立っている。かつてこの地で噴火があったことを今も物語るこの自然岩に着想を得たフェルナンデスは、「独白」と題し、絵画と立体からなるコミッションワークを制作してくれた。