墓地構想

西沢立衛建築設計事務所と計画した墓地構想。芸術の根源となる動機について思考を重ね、行き着いた結論が「祈り」、そして墓地がもつ意味でした。この墓地は、死と向き合うことでどう生きるかを考え、残された人々が生きる希望を取り戻す場所として強く意識し続けている構想です。

感動することとは、体験を通じた活力の回復、世と自分の関係の再構築、そして次の瞬間の生へ期待を持つことです。そして、この墓地構想は訪れた人々にとって感動する場所となっていきます。人が最期の時を迎え、その人がいない最初の日、残された人々は生きる場所と意味を探し求めます。その時見るもの、触れるもの、匂うもの、感じるもの、味わうもの、すべての感覚は、その後の生の道標となるでしょう。

小舟が船着き場に着く。降りると、そこは誰もいないはずの小さな島。一見すると島は木々に覆われていますが、静かに小川が流れ、しとやかに花が咲く。それを見ると、水が流れることは命の循環であることに気付きます。循環のなかに、草花も人々も、そして死者も存在するのです。

足を踏み出すと、道端に佇むいくつかのサインの先に死者の墓標があります。しかしそこにはただ墓標があるだけではなく、生きる者に気づきを与える美術作品、旅の足を休めるベンチもあります。

丘の頂上から地下に広がる祈りの場で、死者と再会し語り合う。森を抜けた先に建てられた小高い見晴らし台から、海と空を望む。穏やかな光と風を感じて、人々は自然と自分の関係を確かめ、そして生きていくことを決意する。ここは死と生を見つめる場所です。